📗 授乳編 PROTOTYPE
薬剤師りーこの授乳服薬指導 教科書
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CHAPTER 2

母乳生理学

乳腺・乳汁分泌・薬物移行メカニズムを薬剤師の言葉で
母乳の成り立ちを理解すれば、薬剤師の判断が変わる
ユキさん

📌 この章の結論(3行)

  1. 母乳は 「血液から精製される高度に制御された液体」。薬剤の移行は乳腺上皮細胞の通過機構に依存
  2. 初乳 → 移行乳 → 成乳 で 組成は変化。薬剤の移行も時期で異なる
  3. 母乳生理を知ると、「飲んでから何時間後の母乳に何が入っているか」 が予測できる

第1章でM/P比・RID・乳児曝露量という 「数値で判断する道具」 を学びました。第2章では 「なぜそうなるのか」 の生理学を深掘りします。母乳の成り立ちを理解できれば、患者から予想外の質問が来ても自分の頭で答えられるようになります。

りーこ先生
りーこ先生
本章は薬剤師向けに「教科書で習った母乳生理」を 実務目線で書き直し たものです。「薬剤がどこを通って母乳に出るのか」を知ると、患者対応の質が変わります。

2-1 乳腺の構造と乳汁分泌の流れ

乳腺は 乳腺胞(lobule)→ 乳管 → 乳頭 という階層構造を持ちます。母体血液は乳腺胞の周囲に張り巡らされた毛細血管から、乳腺上皮細胞 を介して乳汁へ成分が移行します。

段階場所役割
合成乳腺上皮細胞タンパク質・脂質・乳糖 の合成
選択的取り込み毛細血管→上皮細胞血液から特定成分を選択的に取り込み
分泌上皮細胞→乳腺腔合成された母乳成分を腔内へ
射乳オキシトシン作用授乳刺激で乳管が収縮し乳汁排出

2-2 薬剤の母乳移行 5経路

薬剤が血液から母乳へ移る経路は5つあります。薬剤特性によって主経路が異なる ため、これを知ると移行量予測が立ちます。

経路機序適用薬剤
① 単純拡散濃度勾配で受動的に通過脂溶性が高く小分子の薬剤(多数派)
② 細胞間隙細胞と細胞の隙間を通過初乳期に多い(タイトジャンクション緩い)
③ 能動輸送トランスポーター経由イオン化薬・栄養素
④ 受容体介在受容体結合→エンドサイトーシス免疫グロブリン・大分子
⑤ イオントラップ母乳のpHでイオン化→トラップ弱塩基性薬剤(母乳が血漿より弱酸性)

📌 「イオントラップ」を理解する

母乳のpHは 約7.2(血漿は7.4) と、わずかに酸性側です。弱塩基性薬剤(多くの精神薬・抗ヒスタミン薬等)は、母乳側でイオン化されてトラップされ、濃縮されやすい。これがM/P比>1.0の薬剤がある理由です。

2-3 母乳の組成変化:初乳・移行乳・成乳

母乳の組成と移行量は、授乳期の時期で大きく変わります。これを知らずに「妊婦と同じ評価」をすると判断を誤ります。

時期期間特徴薬剤移行
初乳産後〜5日少量・濃厚・免疫成分多・IgA豊富細胞間隙が緩く移行↑。だが量が少ない
移行乳5-14日量増加・成分変化徐々に細胞間隙引き締まり移行↓
成乳14日〜安定。約600-900 mL/日多くの薬剤は 移行少・RID基準で評価

新生児期の数日間は 「細胞間隙経路」 が広いため移行が増えますが、1日哺乳量自体が少ない ため、絶対曝露量は小さい。成乳期に入れば、ほとんどの薬は問題なし

2-4 薬剤投与から母乳への時間動態

薬剤を服用してから母乳に出る濃度は 時間とともに変動 します。授乳タイミングの工夫 でさらに曝露量を減らせます。

薬剤の母乳濃度変化(典型例)

服用後 30分〜2時間 で母乳濃度ピーク → その後 半減期に応じて減衰

📌 タイミングを使う工夫

ただし 「赤ちゃんが欲しがった時に飲ませる」 という母乳育児の基本を歪めるまでのタイミング指導は、QOL悪化を招きます。RID<10%の薬なら 「タイミング気にせず通常通り」 が原則です。

📝 第2章 早見:母乳生理学

  • 5経路 単純拡散/細胞間隙/能動輸送/受容体介在/イオントラップ
  • イオントラップ 弱塩基性薬は母乳で濃縮(M/P比>1)
  • 3期 初乳→移行乳→成乳。初乳期は細胞間隙緩く移行↑だが量少
  • 成乳期 RID<10%なら原則通常通り授乳継続
  • タイミング工夫 短半減期薬で有効。RID低ければ気にしない
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